ファンは作品をこう読むおすすめ度
★★★☆☆
宮崎アニメの作品に歴史的、神話的な内容をリンクさせて書いているこの作品。
確かに読んでいて内容に感心する場面が多々あります。
また、宮崎さんに宮沢賢治や司馬遼太郎が思想的に作品に影響を与えているのかということが分かり、ただただ感心するばかりです。
作品としては「もののけ姫」を中心に「ルパン3世カリオストロの城」、「となりのトトロ」、「風の谷のナウシカ」などを分析しています。
宮崎さんは今の自然の大切さを訴えるだけではなくて、文明の発達によって
何年もかけて失われつつある自然との調和を今一度呼びかけているようでもある。
僕がこの本で一番心に残ったキーワードは「対象性ー非対称性」。
カミと人・人と動物・動物とカミ、この3者の関係が大きく変わったということ。
ヒトは動物であり、また動物をカミと見立てたり重なり合わせたりしていた関係から
3者は平等であったのに対し、科学や産業の発達により平等な関係が崩れ自然や動物に対して一方的な関係になっている。
そのことを憂いてのメッセージ性もあるようだ。
ただ必ずしも僕は宮崎さんが科学や産業など文明の発達を全否定しているとは考えられない。のちに出てくる「ハウルー」などでも機械はやはり存在するが絶対的悪として描かれていないと感じたからである。
これはひとつの見方を示しているが、あくまでも著者による宮崎駿の発言から推論する想像であると感じました。
宮崎駿の奥深さ
おすすめ度 ★★★★☆
日本のエンターテイメントをアニメ映画で支えた宮崎駿。なぜ彼は世界的に人気を博する作品を作り上げたのか。
本書は宮崎作品の中に隠された思想ともいえる宮崎アニメの核を突き止めるという内容である。
その思想は繁栄のみぞ進歩と誤解する人類に対するメッセージと言えよう。彼の映画の『もののけ姫』こそが宮崎思想の隆盛を極めたと著者は言う。それは『となりのトトロ』などの作品から監督宮崎が築き上げてきたものなのだ。
『ハウルの動く城』の内容までもが、宮崎思想の変形であることを理解したければ一読くだされ。