トラビスの生き方に憧れるな。おすすめ度
★★★★★
トラビスの生き方は決して憧れるようなものではない。彼は人に対する「思いやり・愛情」の欠落した人間だ。なぜなら、彼は両親から愛されずに育ったため、愛され方・愛し方がわからないからだ。それゆえ、幸せな状況を「居心地の悪いもの」と受け止めてしまい、そこから常に逃れる生き方をしている。
彼は自分の愛した女、育てるべき子供に対して「大人・親としての使命」というものを果たそうとしない。彼はピーターパンだ。こういった男はそもそも結婚するべきではないし、子供を作るべきでもない。
トラビスは自己満足のために妻と結婚し、エゴが満たせなくなると妻を邪険にした。その結果、妻だけではなく息子をも不幸にした。弟の大きなお世話により、意図せず息子と再会、行き当たり上、妻を捜すことになるが、それは所詮、息子をモノ扱いし、そのモノを持て余すが故、押し付ける誰かを見つけようとしたに過ぎない。
トラビスは、自分の弱さに対峙し、「自分が女々しい奴だ」という事実を認め、だがそれを乗り越えて「真の男」になることを、結局は諦めた「負け犬」である。妻も息子もこんな男と暮らしていてはいつまで経っても幸せになれないから、二人で生きたほうがかえって幸せである。「息子と妻のことを想って行動しているフリをして、その実、自分の得しか考えていない」トラビスの考え方、生き方には私はまったく共鳴しない。
だが、私は'Paris, Texas'の広大な青い空とそこに浮かぶ白い雲の素晴らしい映像、その感動をいつまでも覚えていた。アメリカを車で旅をする生き方に憧れを抱いた。10年後、私はアメリカに移住し、'Paris, Texas'を訪れた。それから更に8年後、私はアメリカ人になった。今でも私はトラビスのような男は友達にしたくない。なぜなら彼は、私も確実に持っている「男の情けなさ」を私の前に晒してくれるからだ。
ルーツとして
おすすめ度 ★★★★★
このセレクションボックスについては様々言われていますが
ヴィム・ヴェンダースという監督とそしてその作品を知るうえでとても
分かり易い選択がされているのではないでしょうか?。
言わずと知れた名作「パリ、テキサス」や「アメリカの友人」を取り上げて語られがちですが、私がこのセレクションで評価をしたいのは「都市とモードのビデオノート」「ベルリンのリュミエール」そして「666号室」です。
その理由として、名作を裏付ける軌跡が細部に渡って描かれている。
この3本がセレクトされたことでさらに作品に深みが出ているのではないでしょうか?。
映像を学ぶ人だけではなく、都市や服飾を学ぶ人、ものをつくるということに興味を持っている人は是非みておきたいものだと思います。
前回のコレクションボックスと比較することもおかしな評価ですが格段に良くなっているのではないでしょうか。