死ぬまで好きなんだと思うおすすめ度
★★★★★
この本に出会ったのは二年前の中三の春のことです。その時期に選んだ、よしもとばななさんの「キッチン」と江國香織さんの「きらきらひかる」という自分のセンスにぴったり符合する二冊のおかげで、今ではすっかり読書が生活の一部になりました。
「キッチン」は特に、知らず知らずのうちに希求していたようなものが、書き付けられていると思います。よしもとばななさんという、「感覚」を単簡に的を得て文章化できる人が書いた、とても良い本だと思います。むつかしい語彙がなくても、感性があります。万人に伝わるような表現を追求した結果、このような表現手法に至り、心揺さぶられる作品を書き上げることが出来たのだと思います。
自分がこの本を好きになったことの理由のひとつに、時期があると思います。つまりタイミング。中三の春というタイミングを逃していたら、好きにはなっても、これほど彼女の作品に肩入れすることはなかったかもしれません。だから余計、なんだかとてつもない作品のように感じてしまうのです。そういう意味では、縁があったのだと思います。
この本によって自分が一番変わったことのひとつに、景色の見方があります。昼と夜。この二つの単語を聞くだけでなんだかぞくぞくします。それぞれその日ごとに表情を変える、昼と夜。他のよしもと作品でも、そういう場面設定がないがしろにされていません。たぶん。
好きな作家は結構いますが、自分の中で、よしもとばななさんと肩を並べるくらい好きな作家は、たぶん、現れないような気がします。死ぬまで好きなんだと思います。いや、死んでからも好きなんだと思います。
日常と、非日常おすすめ度
★★★★☆
キッチン、この作品の持っている空気がいいです。
大切な人を亡くしたのに日常は流れていく。
日常を生きているけど、どこかにぽっかり穴が開いていて、ときたま
そこから感情が溢れ出す。
キッチン、満月のみかげの物語2編で1冊の本にして欲しかったなぁ。
全然別の物語の、ムーンライト・シャドウまで一気に読んでしまったので、
印象がぼやけてしまいました。
同じ「死」を扱っていることもあって、一気に読むとなにか「死」と
いうものが安易に描かれている気がしてしまいます。
間にインターバルを設けて読んだほうがいいと思います。
私的再評価
おすすめ度 ★★★★★
この本は1年に1回くらい読み直しますが、読むたびに発見のある作品です。
文章構成から、ひらがな、カタカナ、漢字、行間、段落、カギカッコの使い方まで、『うまい!』と叫びたくなるバランスを持つ作品です。
読み終えた余韻も心地よい。
吉本さんはこの本で成長し、この本でつまずいたが(本人も記述している)、この本は小さいけれど大きな作品です。
作家は処女作を超えられないとよくいわれますが、その代表格といえるでしょう。