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キッチン (角川文庫)

吉本 ばなな
おすすめ度:★★★★★
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大人の心の予行練習
おすすめ度 ★★★★☆

実は今頃(2006年)読みました。



主人公の、語る言葉が遠くから聞こえる。

父、母、そして祖母をも亡くした主人公は
現実と距離をとる何かを纏ってしまった。
ひとりぽっちになるってことは怖い。
私自身、抱えていた「見ないようにしていた怖いところ」
逸らしていた視線を戻しそうになる。

大きく泣いたり笑ったり、ってお話ではないけれど
「物語として」というより「生あるものの得うる感情として」の
訓練、ないし 構える、準備を与えてくれる。予行練習のような。


・・・そんな、「大人なお話」の気がします。
好きです。



うはっ。
おすすめ度 ★★★★☆

軽めの恋愛沙汰の話かと思いきや、
読後感が意外とずっしりしていて心地よかった。
主人公みかげととある母子の交わりを軸にしながら、
苦難を物ともせずに突き進む主人公の姿が痛快であった。
女性作家が書く女性視点の小説のなかでは、
登場人物が最もホンモノの女性らしく見えるのではないかと思う。
残念なのが、第一作「キッチン」に対して、
第二作「満月」と第三作「ムーンライト・シャドウ」の雰囲気が違い過ぎていること。
後になるにつれてどんどん物語の語り手がハイテンションになり、
物語の進行も妙に気ぜわしくなってしまうのは、
当時のよしもと氏の筆の安定感のなさの表れなのか。
しかし、それでも十分読むに値する作品だと思われる。
とくに「ムーンライト・シャドウ」は、筋書きのぶっ飛び具合が素晴らしい。
大真面目な作品なのに、その大真面目さが絶妙なギャグと化している。



死ぬまで好きなんだと思う
おすすめ度 ★★★★★

この本に出会ったのは二年前の中三の春のことです。その時期に選んだ、よしもとばななさんの「キッチン」と江國香織さんの「きらきらひかる」という自分のセンスにぴったり符合する二冊のおかげで、今ではすっかり読書が生活の一部になりました。
「キッチン」は特に、知らず知らずのうちに希求していたようなものが、書き付けられていると思います。よしもとばななさんという、「感覚」を単簡に的を得て文章化できる人が書いた、とても良い本だと思います。むつかしい語彙がなくても、感性があります。万人に伝わるような表現を追求した結果、このような表現手法に至り、心揺さぶられる作品を書き上げることが出来たのだと思います。
自分がこの本を好きになったことの理由のひとつに、時期があると思います。つまりタイミング。中三の春というタイミングを逃していたら、好きにはなっても、これほど彼女の作品に肩入れすることはなかったかもしれません。だから余計、なんだかとてつもない作品のように感じてしまうのです。そういう意味では、縁があったのだと思います。

この本によって自分が一番変わったことのひとつに、景色の見方があります。昼と夜。この二つの単語を聞くだけでなんだかぞくぞくします。それぞれその日ごとに表情を変える、昼と夜。他のよしもと作品でも、そういう場面設定がないがしろにされていません。たぶん。

好きな作家は結構いますが、自分の中で、よしもとばななさんと肩を並べるくらい好きな作家は、たぶん、現れないような気がします。死ぬまで好きなんだと思います。いや、死んでからも好きなんだと思います。




日常と、非日常
おすすめ度 ★★★★☆

キッチン、この作品の持っている空気がいいです。
大切な人を亡くしたのに日常は流れていく。
日常を生きているけど、どこかにぽっかり穴が開いていて、ときたま
そこから感情が溢れ出す。
キッチン、満月のみかげの物語2編で1冊の本にして欲しかったなぁ。

全然別の物語の、ムーンライト・シャドウまで一気に読んでしまったので、
印象がぼやけてしまいました。
同じ「死」を扱っていることもあって、一気に読むとなにか「死」と
いうものが安易に描かれている気がしてしまいます。
間にインターバルを設けて読んだほうがいいと思います。



私的再評価
おすすめ度 ★★★★★

この本は1年に1回くらい読み直しますが、読むたびに発見のある作品です。
文章構成から、ひらがな、カタカナ、漢字、行間、段落、カギカッコの使い方まで、『うまい!』と叫びたくなるバランスを持つ作品です。
読み終えた余韻も心地よい。
吉本さんはこの本で成長し、この本でつまずいたが(本人も記述している)、この本は小さいけれど大きな作品です。
作家は処女作を超えられないとよくいわれますが、その代表格といえるでしょう。


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