世界映画史上の傑作の一つ−−軍艦における反乱と言ふテーマの原点 おすすめ度 ★★★★★
世界映画史上の最高傑作の一つして、賞賛され続けて来た、映画の古典である。又、ソ連映画の中では、「戦前のソ連映画の最高傑作が『戦艦ポチョムキン』ならば、戦後ソ連映画の最高傑作は『アンドレイ・ルブリョフ』であろう。」と言った人が居た様に、タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』と対に比較されてもおかしくない、傑作である。
私は、ロシア革命には全く共感しない。しかし、この映画の芸術的価値は、そうした歴史観の問題を棚上げさせるに十分過ぎるほど、高い物である。無声時代の白黒映画が、これほど迫力を持ち、人の心を揺さぶる事は、技術ばかりが進化した昨今のハリウッド映画の空しさを痛感させる物であり、その意味で、この作品は、今こそ、見直されるべき作品である。
それにしても、軍艦における反乱と言ふテーマは、何故、こうスリリングなのだろうか。考えてみれば、『ケイン号の反乱』も、『レッドオクトーバーを追え』も、『クリムゾン・タイド』も、『ユリョン』も、『亡国のイージス』も、軍艦における反乱のドラマであり、その意味では、『戦艦ポチョムキン』の焼き直しに見えなくも無い事は、驚くべき事ではないだろうか?(それに、『沈黙の艦隊』や『ジパング』も?)
(西岡昌紀・内科医)
概要
モンタージュという映像文法の基礎を確立させ、映像表現を飛躍的に向上させることになったセルゲイ・エイゼンシュタイン監督の映画史上に残るサイレント映画の大傑作。1905年の夏、黒海沖の巡洋艦ポチョムキン号で、ウジの沸いたスープに怒った水兵たちが反乱を起こし、オデッサの港へ寄港するが、やがて軍隊が押し寄せてきて大虐殺が繰り広げられていく。乳母車が階段を転げ落ちていく、いわゆる「オデッサの大虐殺」とも称されるシーンをはじめとして、現在も多くの映画人に影響を与えており、『アンタッチャブル』のように見事なオマージュを捧げた作品もある。なお、1925年製作作品にもかかわらず、その反体制的内容故か日本での公開は遅れに遅れ、ようやく日の目をみて初公開されたのは67年であった。(的田也寸志)
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