めちゃくちゃ未完成で、言いたいことがまとまっていない感じすらあるのに、なぜか完成された感じをそれなりに出しているのはすごい。この人のいいところは、百パーセント自分に向けて描かれているということ。誰にもこびず、ただ淡々と自分の中の風景を絵にしているだけという感じがする。メッセージもその中に含まれているのだろうけれど、我々の現実がそうであるように、そう理路整然としたものでもないし、百パーセントの肯定でも絶望でもない、それはもっと曖昧模糊としたものである。それを素直に吐き出せるというのは素晴らしい。ある意味、劇的な粉飾を行ったり、象徴的な意味合いと曲ん的メッセージが色濃くなったりせず、独特の調子を伸ばしていって欲しい。
評価は人それぞれかも…おすすめ度
★★★★☆
全8話で、少しずつかかわりあったり、全くかかわりのなかったりする
6人登場人物それぞれの物語と心情をくりぬいて描いていく。短編集に近い感じの作品。
個人的によかったのは、3,4話の「小島さき」の話。
母子家庭で小5になる「さき」は甲斐甲斐しく病気の母親の面倒をみる。世話をしに来てくれる未婚の「せっちゃん伯母さん」は、「さき」に自分の子供の役割を暗に期待するが、「さき」の親子をしたい気持ちは自分の母親に向かっていく。しかし重病と、その性格から母親の役目を果たさない母親。それでも抱き続ける「さき」の淡い希望を打ち消すようにまとわりつく病の「におい」…
3人それぞれの思いとやさしさが、寄り添おうとし、しかし悲しくすれ違う。
多くの漫画では描くことを諦められている人の微妙な心の動きを、筆者が苦労しながらもなんとかして捕まえようとしているところが嬉しい。ただそれが失敗しているところでは、「何がいいたいのかわからない」になってしまうけど…そこはこれからの成長に期待!ということで☆4つです。
悪くはないのだが、力量不足。おすすめ度
★★★☆☆
どの短編も静かなタッチの中に、それなりの衝撃が盛り込まれていたりして、悪くはないのだが、はっきり言って盛り上がりに欠ける。静けさと誇張ない作風は嫌いではないのだが、もう少し会話や構成に工夫があったら、と思わずにはいられない。
たとえば第一話は「笑う」という衝動を抑えるたびに「おでき」ができてしまう女の子が、飾らない素直な男の子に触れるうちに、少しだけ笑うことができるようになり、いままでビンに詰めてとっていた「おでき」のビー玉を川に投げ捨てるまでに至る話。話自体は悪くないと思うのだが、男の子の魅力がさほど伝わらないために、女の子が少しだけ自分を解放したことに全く共感を覚えない。しかも女の子が川に自分の「おでき」を投げ捨てたときに、「アハハ」という音を聞かせたりするのも実に安易。それを書かずにどう表現するかが作者としての力量なのでは?と思ってしまう。
もし期待するとすれば、今後、短編同士、主人公同士がどうつながっていくか。今は若干バラバラに思える作中人物が、次第に交差し、成長していくようなことがあれば、この漫画は化けるかも。そう思っています。
意味はわからないが・・・おすすめ度
★★★☆☆
意味がわからないことが、必ずしも駄作というわけではないが、表紙と絵柄に魅かれて買ったが、意味がわからなかった。印象に残ったのは、第2話「岬はるか」でのはるかが、同級生の男子の角刈りの頭を触りたい、と悩むシーン。それに第8話「安部秋緒」に出てくるさくらちゃんが、すげーかわいかった(男の視点で)ということぐらいかなぁ。
たぶん言葉で総括してしまえば、思春期の少年少女の「からだ」に関する微妙の感情や意識を、透明感のあるタッチと感性で表現しているとかそういうのになる作品だと思う。絵柄の完成度が高いので、それなりに売れると思うが、それ以上かというとマイナーな作風かもねぇ。南Q太さんとかから少し油をぬいた感じという印象。ただ、こういう透明感のある感性中心の作品は時々読むとほっとする。