青春小説を超えておすすめ度
★★★★☆
グロテスクな性描写が満載で、好悪が分かれる作品だとは思います。幼児も動物も、性の対象とされることへの一般的な嫌悪観は社会に共有されているはずですから。主人公の死への傾向が統一的な人格を保証するのではなく、灰のように消えうせてしまいたいということがすごいのだ、という斉藤環さんの解説も一理あると思います。主体的欲望とミクロな欲望の違いということでしょうか。
気になるのは、一見単なるキャバ嬢が、同居人の幼児への性的嗜好をのぞいてしまってから、バランスを崩していくところ。斉藤さん的な分析にもろに乗ってしまうことへの抵抗が作者にはないのだろうか。精神分析タームで説明されつくされちゃっていいのだろうか。
でも言語感覚は別物。この軽妙で洒脱な感覚は「買い」です。このような言語感覚を維持するには、若さゆえに制約される題材(青春小説になってしまう)をいかに広げるかが課題になるような気がしますが、願わくば、制約を超えて、さらに斉藤さんを仰天させるような、説明されてしまわない小説へと向かってほしいものです。若いんだし。
万人には勧められないけれど・・
おすすめ度 ★★★★☆
この人の作品は大好きな人と嫌いな人に分かれています。
でも、どうしようもなく恐ろしい才能があることは間違いなでしょう。
だから、これだけ批判されることも多い。
読まれなければ批判されない。
最後までとりあえず読ませてしまうだけの力があります。
確かに、文章は上手いですが、それ以上に惹きつける力があるのだと思います。
たとえ、それが嫌悪感だとしても。
ただ、もし10代から20代の女性で読むか迷っているなら、読むことをお勧めします。
この作品は今という時代を切り取った優れた文学であり、虚無感と絶望的な愛が
残酷に描かれてます。
読んだあとに、もう二度と読むものかと思う人がいるかもしれませんが、
必ずもう一度手に取り読むことになると思います。