ドキュメンタリーの神髄、万人が納得できる出来栄えおすすめ度
★★★★☆
被害者の涙の訴えからはじまる。原爆を投下した人々が登場し、
あまりの惨劇に狼狽する。
当時の米国の調査ビデオの映像と現在の本人を映像で時間をつな
げる。実に丹念に事実を関わった人々を追いながら検証していく。
このドキュメントはもともとは米国の視聴者のためのモノであっ
た。しかし、この短時間で原爆の全てを検証しているのには驚く。
高齢化した被爆者らの証言は、当時の米国の記録フィルムとオーバ
ーラップする。ぜひ、日本でもTVなどで流してほしい。
映像にはなかったが、実は、広島・長崎で2度被爆した人たちが
大勢いる。160名と言われている、多くは軍医や看護婦である、
負傷者を助けるため、自らも被爆を繰り返すのである。
※米国放映用のためか、日本の現風景が安っぽかったので星を一つ
落とした。
原点としての被爆者と、ドキュメンタリーの新傾向
おすすめ度 ★★★★★
個人の体験をベースに、客観的なビジョンを描いていくのは難しいものだ。また制作物は、製作者の意図とは別に、さまざまな立場から、さまざまな思惑で利用されたりする。
この映画は、アメリカのためでも、日本のためでもなく、被爆者、それも日本の被爆者だけのためでもなく、在日韓国・朝鮮人の被爆者も含めた被爆者たちのためのものだ。それが原点だから、映画は各方向に等しい距離を持とうとしている。
原爆は許さないとか、二度と戦争を起こさせないとかいう従来からの主張も正しいのだが、そういう映画でもなく、また典型的な社会派ドキュメンタリーでもない、独特なユニークな要素を持っている。それはスティーブン・オカザキ個人が持っている資質に裏付けられているのではないかと思う。
もう一つつけ加えておきたいのは、このドキュメンタリー映画は、もともと高利益をあげているアメリカの有料ケーブルテレビ局による、シリアスな題材を扱ったシリーズの番組だということだ。
シリアスで、難しいテーマであっても、内容に興味を持てば、人は金を出してでも見る。ドキュメンタリーは、そういう質を持っている。