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さよならバースディ (集英社文庫 (お52-3))

荻原 浩
おすすめ度:★★★★★
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NHK/FMのラジオドラマで、この作品を知りました
おすすめ度 ★★★☆☆

ラストの場面、主人公と今は亡き恋人との会話が切なくて、BGMとして流れる"Calling You"が哀しくて、とても心に残る作品でした。
改めて原作に当たると…とても心が痛くなりました。自分自身の経歴とも接点があるようなないような…。閉ざされた研究者の世界での、むしろ一般の世界よりもドロドロした人間関係の嫌な部分には十分納得が行きました。
ほんの些細なところに、昔の自分や自分を取り巻いていた環境など重なる部分が感じられて、妙に感情移入して読んでしまいました。
お蔭で、本当に久しぶりなくらいしっかりと、悲しい気分になりました。
主人公が女性の心の動きや、学内政治に疎いところも、いかにもいそうなタイプだと思わせてくれました。…でも心理学屋さんがそんな無垢な気持ちのまま生きていけるんでしょうかね?
ミステリーとしての完成度は…分かりません。でも叙情的な作品としては完成されていると思います。



そもそも 発想がすごい
おすすめ度 ★★★☆☆

そうか、今回はミステリーか?
しかし、この著者の引き出しは多種多様で毎回びっくりさせられる。
頭が下がるなー

さて、内容だが
私は荻原さんにこういうミステリーものを望まないなー。
今の世相から言って、「死」を題材にするのは避けたい。
どちらかと言うと「メリーゴーランド」や「ユニバーサル広告社」のような、本当に心の底から笑わせてくれるものをこの著者に望みます。萩原さんだけですからそういうのを書けるのは。

そうこういいながら、
この本面白いですよ。決して外れではない。荻原さんの本に外れはありませんから。

最後は、
「へー、そうか、そんな仕掛けがあったんだー、凄いなー」
「でも、悲しいなー、辛いなー」
そんな内容です。

■お薦め度:★★★☆☆





人と<会話>のできるサル、‘バースディ’の知る真相とは?
おすすめ度 ★★★☆☆

一応ミステリーのカテゴリーに入るだろうと思われる本書は、いままでの著者の諸作品とは異なり、荻原流のユーモアを極力おさえた、シリアスな作品である。

舞台は奥多摩の東京霊長類研究センター。ここで、“バースディ・プロジェクト”と呼ばれる類人猿の言語習得の研究がおこなわれていた。対象は‘バースディ’という名の3才のオスのボノボ(ピグミーチンパンジー)、この物語の主役である。彼は高い知能を持っており、学習と実験により今では特別製のキーボードを使って人間と簡単な会話が出来るほどになっていた。

生真面目で研究熱心、‘バースディ’に対しても肉親の情をもって接する田中は、1年前、前任の助教授が自殺して以来、あとを継いで主任研究員をしていた。彼は4月のある夜、恋人であり、研究スタッフの大学院生、由紀にプロポーズする。しかし、前向きな返事を告げた彼女は、なぜかその夜のうちに研究所の5階から墜落死してしまう。自殺か、事故か、あるいは殺人か・・・。唯一の目撃者は‘バースディ’。田中は、ショックで打ちのめされながらも、彼女の死の真相を突き止めるべく、‘バースディ’から目撃証言を得るために必死の<会話>を試みる。

そうしたなか、ある財団法人からの多額の研究寄付金が教授らによって不正に運用されている疑いが明らかになり、彼女にも何らかの関わりがあって、さらには1年前の助教授の自殺にもその影が見え隠れしてくる。

彼女はなぜ死んだのか? がメインテーマの本書だが、主役をつとめる‘バースディ’も忘れてはならない存在である。実験とはいうものの、田中たちと親子のような交流をする姿。風邪をひきながらも必死に田中との<会話>を試みる姿。教授らによる不正揉み消しの圧力から身を挺して田中を守る姿。そのけなげな姿は重苦しくなりがちなテーマの物語にセンチメンタルなやわらかさを与えている。


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