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巨匠たちのラストコンサート (文春新書 636)

中川 右介
おすすめ度:★★★★★
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充実の内容に満足
おすすめ度 ★★★★★

いわゆる既成のクラシックマニアにありがちな偏見に毒されておらず、あくまで事実に語らせようという姿勢に好感が持てる。早々に「カラヤンからクラシックに入った」と吐露してはばからず、しかしそれをまったく気にしていないのは(実は私もカラヤン・ファンだが、やはり公言するには勇気が要る)、やはりジャーナリストとしての自信に裏打ちされていると読んだ。小気味の良い切れ味の文体にもそれは感じられ、事実に基づきながらも確固とした主観が盛り込まれて、面白いばかりでなく一種のすがすがしささえ感じさせる。
書き手の思い入れ(思い入れと主観は明らかに異なる)を極力排したかったというが、編集者の「もっと思い入れを!」というアドバイスに不本意ながら従ったと「あとがき」にある。しかし私は、この姿勢を貫いて欲しかったと思う。よくできたノン・フィクションに共通するのは、やはり思い入れの徹底的な排除だからだ。こんなアドバイスをした編集者は無能にほかならず、筆者は実は「あとがき」でそれを訴えたかったのではないか?少なくとも私はそう受け取った。

閑話休題。私はヒマなときにヒマツブシで読もうと買ったのだが、読み始めたら他のことをまったく中断していっきに読み終えてしまった。それほどの求心力のある作品だ。全体の構成まで気を配ったと言うが、確かによく練られており、各話の面白さも十分。例えば最後を飾るのがロストロポーヴィチの話だが、ロシア作家の一作品をめぐって話を展開させるサスペンス張りの構成で、しかも読み終わった後にその構成がはじめて解るという凝った作り。そしてその前には、比較的軽いクライバーの逸話を置くなど(まさにベートーヴェンでいう8番と9番の関係だ)、憎い演出を織り込む。
この手のノン・フィクションは、「〜だったのである」という文章一つにも、事実と反してはならないからその検証作業が膨大だと思う。お気楽なエッセイや小説とは違う労作だ。しかしその苦労を白鳥のように水面下に隠し、淡々と進めてゆく手腕にはとても好感が持てるし、だからヤッパリその無能編集者のアドバイスを聞き入れて欲しくはなかった。
内容には多少のムラがあり、カラヤンには思い入れが強いぶん、それを表出すまいという意識が強く働いたのであろう、かえってスタンスを取りすぎた感がある。が、フルトヴェングラーと前述のロストロポーヴィチは本当によくできており、読み応え十分。

最後に面白かったのは、前述の編集者の理由もあり、思い入れを語るときには大変ためらいがちなのだが、逆に演奏評やディスク評などでは、まさに独断を怖れぬ物言いで切れ味十分以上、それも痛快であった(ただし同意できるかどうかは別問題だが)。クラシックを真に楽しむためにはやっぱりこれくらいはマニアの世界に入っていないと十分とは言えず、そうなると昨今のいわゆるクラシック・ブームというものがいかに皮相なものかがよく分かる。オタクやマニアこそが真の文化の担い手である、とヤッパリ認めざるを得ない、強い説得力を持った一冊だ。



音楽を聴くということ
おすすめ度 ★★★★★

 音楽を意識して聴くようになったころから(たぶんそれは中学生ぐらいだったと思うけど)、アーティストがどんな人でどのような生き方をしてきたか、なんてまるで興味がなかった。同級生はジョン・レノンがどうしたとか、ポールがなんたらかんたらと盛んに喋っていたけど、そんなことはどうでもよかった。CD(当時はレコードだけど)に記録された音楽がすべてで、それさえ聴いていればよかったのだ。クラシック音楽を聴くようになっても事情はあまり変わらなかった。でも、そうではないことに少しずつ気づくようになった。アーティストの背景を知ることで生まれるものもあるということだ。『巨匠たちのラストコンサート』は、トスカニーニで始まりロストロポービィチで終わる9個の物語(ボーナストラックを入れると10)。ラストだと意識していた人も図らずもラストになってしまった人も、それぞれに悲しい物語を秘めている。しかし、それを知ったあとで聞こえてくる音楽は、それを知る前とでは確実に違っているだろう。


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