マニアを泣かせる おすすめ度 ★★★☆☆
「あくまで虚構に徹した全体の設定の中で、江戸川乱歩や横溝正史、木々高太郎、大下宇陀児、城昌幸など実名で登場する霊界の探偵作家たちについては、私の記憶にある生前の風貌を、思い出すがままに再現してみた。その点で拙著『推理文壇戦後史』の小説版といえるかもしれない」(「あとがき」より)。長い引用になってしまったが、本書の魅力はここに言い尽くされている。コナン・ドイル、ヴァン・ダイン殺害の謎を、探偵作家クラブの面々と山村自身を投影したと思しき主人公が解いてゆくのだ。正直、霊界という設定は少々無理があり、ミステリの要素を逆に削いでしまった感があるが、とにかく登場する人物だけで読ませる。その意味でマニアが読んで楽しい一冊だ。『推理文壇戦後史』が取っ付きにくい人!な!ど本書から読むといいかもしれない。しかし香山滋や大坪砂男、楠田匡介が登場する小説というのは本書以外にはありえないだろうな。
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