傑作になる予感おすすめ度
★★★★★
「特攻の拓」の天羽や「R-16」の南雲に託されてきた、佐木飛朗斗のロックとクラシックへの憧憬が、ついに全開になりました。独創的な台詞の数々に彩られた、いままでにない音楽まんがの誕生です。さまざまな人間の愛憎が複雑に交錯する展開は、佐木作品の独壇場。
山田秋太郎も、キャラクタは魅力的だけどストーリーは暴走しがちな佐木先生の原作を、メリハリの利いた絵柄と演出でがっちりと制御しています。読みやすい。実力派のまんが家ですね。
原作と作画のすばらしいコラボレーションで、傑作になる予感がします。
つづき!
おすすめ度 ★★★★★
“パッサカリア Op.7”の続き! まさか続いているとは!
主人公の音無歩夢【オトナシアユム】は、オンガクをやりたくてフリーターで過ごしている二十二歳。ポジションはベース。だけど、いつも流れにノってしまって、だすべきオトからはずすことになり、仲間からは不評ばかり。
あるとき、ふとしたことがキッカケで、“印南烈”という青年と出会う。彼の“義指”から放たれる美しい音色、そして激しいジャズ――。そしてあるできごとを機にベーシストが降りてしまい、烈は一人で演奏を続けることとなる。歩夢はその代わりを勝手に務める。自分が仲間内からつまはじきにされて、一人で演奏することのつらさを知っていたから。
ラフマニノフの“Op 36.ピアノソナタ二番変ロ単調”、ワーグナーの“炎の音楽”、リストの“調性の無いバイガル”――此処まで来て、烈はペースを一気に上げ、“ミカゾノのピアノソナタ零”を弾き始める。その曲の壮絶さに歩夢がついていけないと思ったそのとき演奏は打ち切られ、観客からは盛大な拍手が送られた。
歩夢の夢が、才能が、いま、花開こうとする―――。
歩夢には歳の離れた妹・樹里絵(十二歳、ウェクスラー式全検査で152という天才)と母親がいる。母親は再婚を考えており、二人はそれをよく思っていない。とくに樹里絵の、母親に対する態度は顕著で、母親は樹里絵を快く思っていない。それというのも、母親は『自分の希望』を樹里絵たちに押しつけている、自分勝手な“女”だからだ。
なぜ烈が義指を持つようになってしまったのか、ジークフリート・ガンディーニや政美との確執は? それらが少しずつ明らかになる。ちなみに烈は十九歳、【パッサカリア Op.7】から約三年の月日が経っている。
クラシックがジャズやロックへと変化する激しさや興奮は、“スウィート・ボックス”が好きな人間、ロックやジャズが好きな人間、さらにはクラシックが好きな人間とってはたまらないものとなるでしょう。