大昔まだ私が10代の時に、岩田豊雄という著者の「海軍」を文庫で読んで、その書の主人公と親友が海軍を志望し一緒に江田島へと頑張っていて、その努力に私も受験に頑張らねばと刺激された記憶が強く残っていました。約40年経った今、この書が獅子文六著ということで書店の棚で見かけた時はその再会に大変感激を致しました。(岩田豊雄氏は獅子氏の本名とは知りませんでした。)早速久々振りに読み返しますと、また更に主人公の性格、人柄、軍人としての資質、全てが理想であり、彼を素晴らしく尊敬する幼友達、また何とも言えない淡い恋心を抱く妹、各々の父親、母親の情愛、当時の海軍魂、世間の緊張感、昭和16年12月8日真珠湾での特殊潜航艇作戦、軍神の英霊となって海軍合同葬でそっと手を合わせる親友の兄妹・・・。戦争に突入する当時に育った若者のドラマを読みながら、40年前と同じように涙が止まりませんでした。主人公の谷真人中尉(2階級進級で海軍少佐)は23歳、実際の軍神九勇士の横山正治少佐がモデルであり、大変迫力あるタッチの名著であり、まちがいなく今後これからも何回も読み直したい書だと思っています。
戦争協力と文学者の立場おすすめ度
★★★★☆
名脚本家笠原和夫の「昭和の劇」(太田出版)を読んでいて、この本の存在を知った。笠原和夫の年譜の中に、少年時代に岩田豊雄名で出された本作を読んで海兵を志したとあったからである。私生児であった笠原は結局海兵への途を閉ざされ、二等兵曹として戦争に参加することになる。要は下士官兵として海軍を知るのだ。その実態がいかようなものであったかは、笠原の本を読んで頂くしかない。
で、本作品である。
岩田豊雄というのは獅子文六の本名だそうである。筆名ではなく、本名で出した理由をいろいろと想像してみたくなる。
出来のよい小説ではある。だが、そうであるがゆえに、「動員」の力が大きいのである。丁度笠原が本作に熱中して海兵を志す動因になったように。
軍隊に付き物の鉄拳制裁もない。主人公はあくまで童貞として戦死したという・・・・・・・なわけねえだろ、と誰しも思うのである。獅子文六もそんなことは承知だろう。
筆名ではなく本名で出したところに、モノカキとしての倫理を感じるのだ。
なに書いてもすごい人だ
おすすめ度 ★★★★★
泣きました。てんやわんやに続いて2冊目の獅子文六ですが、全く違う展開に驚くとともに、後半はもう泣かずにはいれませんでした。てんやわんやとともにオススメです。